2015年06月19日
呼吸で取り入れた酸素を全身に運ぶ
鉄は、酸素を運ぶ赤血球を支える、非常に重要な成分です。身体の中に成人男性では3.5g 、女性では2.1gほど存在します。このうち約70%は赤血球のヘモグロビンや筋肉中のたんぱく質の構成成分となり、これらは「機能鉄」と呼ばれ、肺から取り込んだ酸素を全身の組織に運搬する重要な働きをしています。
残りの約30%弱は「貯蔵鉄」と呼ばれ、肝臓や骨髄、脾臓などにストックされ、機能鉄が不足したときに利用されます。貯蔵鉄も不足すると鉄欠乏性貧血が起こり、動悸、息切れ、食欲不振の他、免疫力も低下して口角炎や舌炎など粘膜にも異常が起きます。
その他、体内に存在する鉄の約0.3%は酵素の構成成分となり、エネルギー代謝において重要な働きをしています。血液中に吸収された鉄は、トランスフェリンと結合して、主に骨髄の赤芽球に渡され、ヘモグロビンの合成に利用されます。余った鉄は肝臓や脾臓に取り込まれ、必要になれば血液中に出てきます。
貧血患者の7割 鉄欠乏性貧血
酸素を運ぶ赤血球は、古くなると分解されて骨髄でつくり変えられます。鉄もこのときに分解され、多くは再利用されますが、一部は体外へと排出されてしまいます。
鉄が不足すると、まずは体内に蓄えられた貯蔵鉄が流出して血液中の機能鉄へと回されるため、初期段階では貧血症状は起こりません。しかし、貯蔵鉄は確実に減り続けているので、疲労しやすくなったり、頭痛や肩こり、冷え症などの症状が現れるようになります。そして貯蔵鉄が底をつくと、血液中にある機能鉄も減少。赤血球が正常につくられず、酸素の運搬能力が低下して全身の細胞が酸素不足に陥ります。これを補うために心臓が過度に動いて動悸や息切れ、めまいなどの貧血症状が起こります。そして疲れやスタミナ不足も感じやすくなってしまいます。
日本人の貧血患者の7割がこのような鉄不足による鉄欠乏性貧血に該当するといわれています。
さまざまな年代で不足しがち
カルシウムと並んで、鉄は日本人の食生活で不足しがちなミネラルです。特に女性は鉄不足になりやすく、成人女性の4人に1人が鉄不足によって起こる『鉄欠乏性貧血』に悩まされています。潜在的な貧血予備軍はさらに多いと言われています。実際の摂取量でみると、女性はほぼ全年代で、厚生労働省による推奨量を下回っています。
その他にも、身体がぐんぐんと大きくなる成長期の中高生や、日常的にスポーツをする人は、赤血球の消費が多いので、鉄が不足しがちです。
吸収されにくいミネラル
鉄は体内に吸収されにくい栄養素で、不足すると鉄欠乏性貧血を起こします。酸素が全身に供給されないことで疲れやすくなったり、頭痛や動悸、息切れ、食欲不振などの症状が現れることもあります。特に成長期や月経のある女性は注意が必要。1日の摂取基準も年齢や性別、月経の有無によって違いがあり、必要量が最も多い月経のある30〜69歳の女性の推奨量は10.5mgとなっています。食事からの体内吸収率が約15%と低い鉄の補給には、手軽なサプリメントがおすすめです。
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参考文献:
吉田企世子 松田早苗 監修『おいしく健康をつくる あたらしい栄養学』
毛利博 編著『トコトンやさしい血液の本』 |