2015年02月16日
記憶のしくみ
記憶は、脳に入ってきた情報をどれだけ長く覚えていられるかによって3種類に分けられます。一般に、時間の短い方から感覚記憶、短期記憶、長期記憶と呼ばれています。感覚記憶とは、見たり聞いたり触ったりといった感覚の刺激を最初に受け入れた状態のことです。これらの情報をすべて覚えているのは大変なので、この感覚記憶は数秒で消えてしまいます。私たちが無意識に受け取る情報全部が感覚記憶といえます。
感覚記憶の中でも、意識的に注意を向けた物が短期記憶として残ります。それをさらに覚えようとして頭の中で何度も繰り返したり、つぶやいたりといった努力した結果、記憶として定着するのが長期記憶です。うまく記憶すると何十年も、ものによっては一生忘れない記憶となって残ります。
こうした記憶を司っているのが大脳辺縁系の中にある海馬と呼ばれる部分です。海馬は左右側頭葉の奥にそれぞれ1個ずつあり、五感をはじめ、あらゆる感覚器官が受け取った刺激が電気信号のように変換されて集まってきます。海馬は信号を整理し、一時的(数ヶ月程度)に記憶を蓄える働きを担います。それから側頭葉をはじめとする大脳皮質に移され、記憶は固定されていきます。
加齢による変化
人は年齢を重ねると、海馬の神経細胞が減少し、短期記憶から長期記憶への移行がスムーズに行かなくなります。つまりもの覚えが悪くなります。これは、神経細胞の脱落や、神経細胞にある樹状突起が縮小することが原因。一説によると脳細胞は1日に約10万個が死滅すると言われ、最も減少の著しい部位は前頭葉です。記憶を司る海馬の場合、細胞の脱落率は10年で3〜5%とも言われ、80歳だと約20〜30%の細胞が脱落すると言われています。このように記憶、特に短期記憶は健康な人であってもある程度損なわれてしまいます。
「ボケ」と「認知症」は違う
歳をとると、誰もが記憶力の衰えを感じることは先に述べた通りです。また、新しいことを学習することも以前より時間がかかるようになります。
普通のもの忘れは、あくまで記憶が呼び出せないだけで、病気ではありません。しかし、本当に記憶が呼び出せなくなり、脳から消え去ってしまう場合は、認知症という病気です。通常のもの忘れと認知症のもの忘れを比較すると、通常のもの忘れは体験の一部を忘れるだけですが、認知症の場合は体験の全部を忘れてしまいます。例えば、朝の食事の献立を思い出せないのは通常のもの忘れで、朝食を食べたこと自体を思い出せないのが認知症です。
認知症の場合、もの忘れにとどまりません。時間や場所がわからなくなったり、暗算ができなくなったり、簡単な道具でさえ使えなくなり、手順を踏む作業も困難になるなど認知傷害へと進行します。
認知症を引き起こす病気は200〜300近くあるとされていますが、その代表がアルツハイマー病や、脳梗塞などで起こる脳血管性の病気です。認知症は良い生活習慣を保つことで、予防したり、症状のある人でも進行を遅らせたりすることができると考えられています。
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参考文献:
板倉弘重監修『見る見るうちに記憶力が激烈に回復!』
渡辺登著『ボケにならない暮らしのテクニック』
主婦の友編『もの忘れを防ぐ100のコツ』
高田明和著『脳が若返る 脳内至福物質の秘密』
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