(1) |
東京地方裁判所の判決 |
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夢実耕望、岡田清、久保田史、小林金夫、小林正子はインシップに対して、連帯して、1億7965万6697円及びこれに対する令和元年7月18日から支払い済みまで年5%の割合による金員を支払え。 |
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(2) |
事案の概要 |
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夢実耕望が合意に違反した原料を使用し、15年にわたり継続してきた取引を一方的に停止したことにより合計26億5538万7740円の被害を被ったとして、その一部である13億8500万869円の支払いを求めるもの。 |
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(3) |
夢実耕望の合意違反を認める判決 |
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1. |
合意原料のみが記載されている原料配合表等の資料を開示している |
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2. |
合意原料の原料メーカーからの問い合わせを受け、インシップが使用原料の報告を求めると、その直後から合意原料のみをしようするようになり、このことは指定原料以外を使用していることを知られないようにするための行動とみることに整合性があって、本件合意の存在を裏付けるものといえる。 |
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3. |
合意原料以外の原料が使用されている事が暴露された後、夢実耕望はインシップに対して1億6000万円余りを支払う旨の文章を交わすことを提案したものであり、このことは、まさに本件合意が存在し、夢実耕望においてそれに反することをしたとの認識の下に謝罪をし、損害賠償を申し出たものであるとみることができるのであって、本件合意の存在を極めて強く裏付ける。 |
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4. |
久保田史がパソコンで作成した資料に押印した小林金夫においては、その当時、原料名が固有名詞であると知っていたと認められる。 |
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5. |
久保田史も、少なくとも平成16年4月に原料名が一般名称でなく固有名詞であることを認識していた |
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6. |
岡田清は、平成30年5月16日、本件合意違反を認めるのみならず、指定と異なる原料メーカーから安く原料を仕入れて夢実耕望として利益を出そうとしていたまで述べ、謝罪するメールの中で夢実耕望の代表取締役の交代や役員改選にまで言及したほか、小林金夫は損害賠償として1億6100万円を支払うことを内容とする覚書案を添付したメールを送信している。 |
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7. |
以上のとおりであって、夢実耕望とインシップの間には本件合意があったと認められる。 |
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(4) |
夢実耕望の取引停止は違法・不当であるとの判決 |
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1. |
短期間で製造業者を変更することは困難であるといわざるを得ない。 |
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2. |
夢実耕望とインシップが(継続的供給等仮処分中立事件)和解成立後約5か月間の製造物供給を約したことは、インシップが取引先を探し、実際に納品を受けられるまでの期間として、5カ月程度は必要であると想定されたためであると考えるのが自然である。 |
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3. |
(夢実耕望の主張する)約50日という猶予期間は、インシップが夢実耕望に代わる取引先から納品を受けられるまでの期間として相当なものであるとはいえず、夢実耕望は取引停止に際して、十分な猶予期間を設けていたということは出来ない。 |
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4. |
夢実耕望による本件取引停止は信義則上の注意義務に違反するもので、違法・不当である。 |
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(5) |
岡田清の損害賠償責任を認める判決 |
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1. |
久保田史及び小林金が行った本件合意違反につき、監視監督する義務を怠ったものであり、そのことに少なくとも重過失があったと認められる。よって、岡田清は、会社法429条1項に基づき、インシップに対する損害賠償責任を負う。 |
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2. |
岡田清は本件取引停止を行ったのであるから、本件取引停止につき、民法709条及び会社法429条1項に基づき、インシップに対する損害賠償責任を負う。 |
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(6) |
久保田史の損害賠償責任を認める判決 |
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1. |
久保田史は、インシップとの取引を担当しており、合意原料を用いていると示した原料配合表等を作成しつつ、合意原料以外を使用したものである。そうすると、久保田史は、本件合意の存在を認識しつつ、合意原料以外を用いて本件製品の製造を行ったと認められるから、民法709条に基づき、インシップに対して損害賠償責任を負う。 |
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2. |
久保田史は、夢実耕望の取締役であり、その中で本件合意違反を行ったものであるから、会社法429条1項によってもインシップに対する損害賠償責任を負う。 |
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3. |
久保田史は、代表取締役に就任し、本件取引停止を行ったのであるから、本件取引停止について、民法709条及び会社法429条1項に基づき、インシップに対する損害賠償責任を負う。 |
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(7) |
小林金夫の損害賠償責任を認める判決 |
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1. |
小林金夫はインシップと直接取引を開始した当時、取引内容を協議するなどの対応をし、その後、合意原料以外も使用するようになった。そうすると、小林金夫は、本件合意の存在を認識しつつ、合意原料以外を用いて本件製品の製造を行ったと認められるから、民法709条に基づき、インシップに対して損害賠償責任を負う。 |
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2. |
小林金夫は、取締役であり、代表取締役であったところ、その中で本件合意違反を行ったものであるから、会社法429条1項によってもインシップに対する損害賠償責任を負う。 |
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