2017年07月19日
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睡眠が不足してしまうと、様々な病気の引き金になります。睡眠が変われば体と心が変わり、良い睡眠には人生を変えるほどの力があります。不眠を改善する知識を身につけて、健康的な日々を送りましょう。
睡眠に必要な時間は、個人差があり、また、年をとるにつれて睡眠時間は減る傾向があります。日本人の睡眠時間は年々短くなり(下のグラフ参照)、50年前と比べて約1時間短くなっています。
睡眠には、脳の活動を抑えることで、その機能を回復させる効果があります。その日、脳に入った情報を整理して、脳の中に記憶として定着させたり、脳の疲れをとることで日中の集中力を高める働きがあると考えられています。
睡眠は成長ホルモンの分泌にも関係しています。成長ホルモンは、成人すると体の損傷の修復や疲労回復を促す働きがあります。睡眠が不足すると、ホルモンの分泌や自律神経の働きが乱れ、体調を崩しやすくなります。
例えば、食欲に関わるホルモンの分泌が変化したり、糖代謝に関わるインスリンの働きが悪くなるため、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病を引き起こしやすくなります。不眠状態が長く続くと、うつ病にかかるリスクが高まることも知られています。
アルツハイマー病患者の脳内には「アミロイドβタンパク」という老廃物が蓄積していますが、睡眠不足や、睡眠の質の低下によって、この老廃物がさらに蓄積されると言われています。また、睡眠をとると、この老廃物が排出されることも確認されています。
不眠の症状があり、治療が必要と判断されても、すぐに薬の治療を始めるのではなく、まずは生活習慣の見直しから始めることが推奨されています※。普段の生活のなかで不眠を引き起こす原因がないかを探り、見直していきましょう。
■ポイント1:規則正しい生活を送る
●食事
食事の時間が不規則になると身体のリズムが乱れ、睡眠には悪影響。体内時計が刻むリズムに合わせて食事は3度、毎日同じ時刻にとりましょう。
●運動
ウォーキングのような有酸素運動は寝付きを良くしてくれます。寝る直前の激しい運動は、逆に寝付きが悪くなってしまいます。
●入浴
リラックス効果と深部体温を引き上げる効果で快眠を導きます。就寝1時間程前にぬるめのお湯に浸かるのがおすすめです。
■ポイント2:寝る前の飲み物・喫煙は避ける
●アルコール
一時的に寝付きは良くなりますが、眠りが浅くなるなど、睡眠の質が低下。利尿作用があり尿意で目覚めることも。
●カフェイン
カフェインの作用は4~5時間続くため、夕食後の日本茶やコーヒーなどカフェイン含有飲料は避けましょう。
●たばこ
ニコチンには精神刺激作用があり眠りの妨げに。禁煙補助の貼付薬やガムにもニコチンが含まれているので要注意。
■ポイント3:固定概念を排除する
早寝早起きにこだわり、眠くないのに早く寝床に入る人がいます。「眠りたいのに眠れない」を繰り返すと、不安や緊張が積み重なって不眠に陥ることがあります。また、長時間の昼寝は夜の寝付きを悪くし、眠りを浅くしてしまいます。
●リラックス状態を促す「GABA」
GABAは天然のアミノ酸で、食品では玄米や野菜、発酵食品に多く含まれています。生体内では海馬や小脳、大脳などに多く存在し、脳をはじめとする中枢神経系で神経伝達物質として働いています。
人の体は交感神経と副交感神経からなる自立神経系で様々な調節がなされています。ストレスで緊張している時は交感神経が、リラックスしているときは副交感神経が優位になります。神経を興奮させる神経伝達物質ノルアドレナリンは、交感神経を刺激します。GABAはこのノルアドレナリンの分泌を抑えることで、興奮した神経の働きを鎮め、不安状態や興奮状態を緩和させて精神安定をサポートします。
●不安やイライラを鎮める「カルシウム」
骨や歯を形成し、血液などにも一定濃度が含まれるカルシウムですが、筋肉や神経の働きを正常に保つ働きも重要です。カルシウムが不足すると、イライラするなど神経過敏な状態になることがあります。カルシウムを補うことでホルモンや酵素を活性化させ、神経の興奮を抑制してくれます。
●神経機能、疲労回復をサポート「ビタミンB群」
体の機能の調節や維持に不可欠な有機化合物のビタミン。中でも、水溶性のビタミンB群は補酵素として重要な役割があり、神経伝達物質の合成に欠かせません。特にビタミンB1やB12などは不足すると神経系の働きが悪化してイライラやうつ状態になりやすくなると言われています。排出されやすいので毎食、こまめに摂取を。
●GABA(ギャバ)
●カルシウム
●ビタミンB群
参考文献:
「きょうの健康」番組制作班、主婦と生活社ライフ・プラス編集部 編集 『NHKきょうの健康 耳鳴り・難聴、めまい、手の痛み・しびれ、不眠 「不調」スッキリ解消法』
千葉真美 監修 『どんな不眠も治る安眠ガイド』