2015年8月19日
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極端なダイエット・偏食、インスタント食品や加工食品ばかりに頼る食事は充分な栄養が摂取できない為、味覚が落ちることがあります。味覚にとって一番大切な栄養素は「亜鉛」。味を感じるセンサー「味み蕾らい」の新陳代謝に関わり、不足すると味覚が鈍ってしまいます。加工食品の中に含まれている食品添加物は亜鉛を体内から排出してしまうものもあるので、なるべく加工品に頼らない食生活を心がけましょう。
下の図は加齢に伴い、味覚閾値が変化することを示しています。閾値とはそれぞれの味を感じさせるに必要な濃度の最小値の事を指します。15歳から29歳を100%とすると75歳から89歳では、塩味は400%を超えています。つまり4倍近い濃い味つけでないと塩味を識別できません。加齢により味覚細胞が減少するためそれぞれの味の感受性が低下してしまうのです。
高齢者の約4割が6種類以上の薬を併用しているとの調査結果を東京都健康長寿医療センター研究所のチームが発表しました。いくつもの医療機関を受診し、それぞれの医療機関でバラバラに処方されるため次第に薬の種類が増え、過剰投与につながりやすいようです。中には味覚に影響を与える薬もあるとされているので、かかりつけの医者や薬剤師に相談したり、定期的に薬の内容を見直すことが大切です。
味覚障害は、亜鉛欠乏の最初の兆候です。私たちが味を感じるのは、舌にある「味蕾」という器官のおかげであることは先に述べましたが、味蕾の中の味細胞には多くの亜鉛が含まれています。この味細胞は新陳代謝が活発で、10~12日のサイクルで新しい細胞に生まれ変わります。亜鉛が不足すると、味細胞の代謝が遅れ、味覚障害を引き起こしてしまいます。
もともと亜鉛不足は高齢者に多くみられました。味覚障害の患者数は高齢になるほど増える傾向にあり、60~70代がピーク。高齢になると食事の摂取量が減って亜鉛不足になること、胃腸の働きが弱まることで亜鉛の吸収が低下することが原因に挙げられます。亜鉛不足による味覚障害は、初期の段階であれば、亜鉛の摂取によって正常に戻せると言われています。
参考文献:
独立行政法人国立健康・栄養研究所監修『基礎栄養学(改訂第3版)』
吉田 企世子・松田 早苗監修『安全においしく食べるためのあたらしい栄養学』